ゆとぶろ

IT業界在住ダラリーマンの日々徒然

ゲーム実況について考える①

 はじめに

Youtubeニコニコ動画、Twitchなどで検索すれば、溢れるゲーム実況動画の数々。別段興味がない方でも動画サイトに行けば1度は目にしたことがあるでしょう。完全に市民権を得たと言っても過言ではありません。

www.asahi.com

>>2017年の世界のゲーム配信動画の市場規模は46億ドル(約5060億円)。視聴者は21年には8・1億人に達し、17年の1・2倍になるという。

すごいですね…。

 

私もプロフィール欄に『ゲーム好き』とわざわざ書くほどです。幼い頃からゲームとはいつも一緒でした。大人になった今も隙間時間を見つけてはゲームプレイ、やってます。愛してます。

しかし、『ゲームをプレイすること』『ゲーム実況を見ること』の両者には似ているようで大きな隔たりがあることを昨今感じずには居られません。またゲーム実況界隈を取り囲む現状やその先の未来についても色々と思いがあります。

 

生粋のゲーム好きだからこそ、昨今のゲーム実況というカテゴリについて思うことを、特にとりとめもなく不定期に書いてみようかなと思います。 

「ゲーム実況を見た」はゲームプレイなのか?

ゲーム実況を見るという遊びは簡潔に述べるなら、『ゲームをプレイしている人(ないし人たち)を後ろから見てる』に近い遊びです。昔ファミコン/スーファミの時代に、親・兄弟がゲームプレイしているのを後ろから見てるのが好きだったという方には共感しやすいのではないでしょうか。

同じゲーム作品であっても実況する人間のパーソナリティによって、ガラリとその印象が変わるのも面白いところです。誰もが惚れ惚れするスーパープレイを見せる方もいれば、見てるこっちがイライラするほど下手くそなプレイをする方もいて、その差を見比べるのも面白いです。

 

一方でゲームは自分でプレイするから面白いんだ」というプレイヤーと「ゲーム実況で見るのが好き」という実況ファンとの間には微妙なズレがあります。

実際にプレイした人間にとって難易度の高かったシーンは、自己の体感として感じられた経験・リアリティであるのに対して、実況プレイを通して見た人にとってはもしたまたま見ていた実況者が簡単にクリアできていれば、全く印象に残らない可能性すらあります。

すると「あそこで苦戦してさーw」みたいな会話を振っても「えっ?そんなところあったっけ?」となるわけです。同じゲーム作品を通した体験であっても、この差は意外と大きな差です。

もはや「実際にゲームをプレイした」と「ゲーム実況を通して見た」は別物と捉えるのが正しいと言えるでしょう。

 

ゲーム実況とは二次創作なのか?

ゲーム会社からお金をもらって宣伝として行うケースもあるかもしれませんが、少なくとも制作現場に関わっていることはまず無いでしょう。一次創作を行っているのは間違いなくゲーム開発会社です。

ではゲーム実況は二次創作なのか?困った時は言葉の意味を調べてみよう。

ja.wikipedia.org

 

以下引用

>二次創作物(にじそうさくぶつ)とは、原典となる創作物(以下、「原作」という)に登場するキャラクターを利用して、二次的に創作[1]された、独自のストーリーの漫画小説フィギュアポスターカードなどの派生作品を指す[2](そのため、一次作品のメディアミックスは含まれない)。

 

ゲーム実況は別にゲームに登場する内容を改変するわけではないですが、実況者のパーソナリティや声・アイディアによって独自の展開がされる余地があります。

実際に「○○を実況」というシリーズ物が50回や100回を越える大長編に渡り、完結の暁には実際のゲームプレイとは全く別の感動を呼ぶという例はいくつもあります。長編ドラマを見ているような謎の感動がそこにはあります。

「オリジナルのゲーム+実況者のパーソナリティやアイディア=別作品」 という図式が成り立っているわけです。二次創作物…という言葉の枠には収まらないかもしれませんが、二次創作的雰囲気を持った何か と言うことは出来るかと思います。

 

ゲーム実況者はタレントなのか?

では、そんな二次創作的何かを生み出すゲーム実況者達は果たしてクリエイターなのでしょうか?それともタレントなのでしょうか?

意外とやってみるとゲーム実況を収録しアーカイブを上げていく作業は「大変」です。私も50part以上のゆっくり実況動画を上げていた事がありますが、メチャクチャ大変です。(肉声かゆっくり音声なのかで手間の質は変わりますが)

あ、もう更新はしてないですがダイマしておきますね^^

 

t.co

新作ゲームが発売されると、冒頭で紹介した動画サイトには無数の実況動画がアップロードされます。そんな玉石混交の動画の中からユーザーに選んでもらうためには、様々な努力=クリエイティブな作業が必要となります。

自身を投影したキャラ画像、キャッチーなサムネイル画像、OP/ED動画を用意するのは当たり前。聞き取りやすい喋り方や見やすい編集、終いには顔出しや自身の性を持ち出して戦う者まで現れ始めています。もはや実況者戦国時代の様相です。

 

クリエイター的な側面もあればタレントとしての側面もあります。今でも手作り感を大事にしている実況者の方も多いでしょう。しかし最近は編集や画像作成は外注してしまい、実況者は実況に専念するというケースが増えているようです。

 

これってもはやタレント業なのではないか?

TVによく出る芸能人達が自身のパーソナリティを切り売りして、わずか一握りの売れっ子になるために、あの手この手を使って凌ぎを削る戦いと同じような空気を感じずには居られません。

ゲーム実況はマネタイズによってタレント業になった?

私は、「ゲーム実況はタレント業になった。なってしまった。」んだと思います。

ここまでゲーム実況が流行る前、国内ではどちらかとアングラで「俺の好きなゲームを皆と共有したい!」で始まるシリーズが多かったと思います。

しかし、ゲーム実況というジャンルが圧倒的な再生数を叩き出すようになり市民権を得てくると、広告やスポンサーが付き始めマネタイズが始まります。

 

それを悪だと言うつもりはありません。むしろ私はお金を払える仕組みはあるべきだと思います。面白い実況動画を上げてくれる人にお金を払いたい。応援したいと思う気持ちが芽生えるのは当然のことです。

しかしそのマネタイズ構造が「一山当ててやるぜ^^」「不労所得バンザイ^^」な集団を一定数生んでしまった事実もまた否定は出来ないとも思うのです。

また実況者たちのパーソナリティがタレント性を帯びるに従って、囲いやファン同士の諍い、叩き合い、炎上、デジタルタトゥーの暴き合いなどなど、人類の愚行には枚挙に暇がありません。

 

この辺の肌感がよく分からない人たちに手っ取り早く理解して頂くために、最近あった出来事で有名な実況者2人組が解散宣言を行った出来事のまとめ記事と、併せてなんJ民の反応のまとめを引用させて頂きご紹介しておきます。

taka-me.com

nanjgod.blog.jp

月額会員数 5万人 * 500円 = 月収 2,500万(※有志推定

引退宣言 =最後の放送でのスパチャ(投げ銭 = 5087万4438円 (※有志調べ

 

それにしても金額の桁の大きさには素直に驚かざるを得ません。間違いなく実況者の中でもトップ人気の一翼だったと言える彼らに対して、これほどまでの金額が動く事実があったことは認識しておいてもいいのではないでしょうか。

 

私個人は彼らのパーソナリティは正直あまり好きではありませんでしたが、確かに彼らの動画を見ればクスっと笑わせられる面白さが間違いなくありました。10年以上活動しファンと共に歩んだ歴史は間違いなく今後も語り草になるレジェンドでしょう。

 

またなんJ民の反応の中には、素直に引退を肯定するコメント以外にも金稼ぎうぜーといったアンチのコメントや、他の実況者を引き合いに出すようなコメントも多数見受けられる点がポイントです。 彼らはファン以外の人間たちにも好奇の目に晒されているのです。

 

これはもはや新時代のタレント業といってもおかしくないと思います。

「彼らは存在だけでお金が取れる」のです。お金を払ってでも彼らの実況が聞きたい、プレイが見たいファンと、アンチも含め活動の良し悪しを問わず動向を逐一チェックしたいという人間が数万人単位で存在するのです。

 

もしマネタイズされていなかったら、彼らの活動はどうなっていたでしょうか?

ここまで長く続いたでしょうか?こんなに大きな出来事に発展したでしょうか?

ファンの方にとっては「お金は関係ない!」と思う方も多いでしょう。しかし、お金には人を集める魔性が確実にあります。お金の集まるところに話題性や集客力が自然と発生するのは自明の理。ファンの献身や応援として送られたお金が彼らの活動を支えた面も少なからずあったはずです。

 

始まりは純粋な面白さだった(はず?)お金が先じゃない(だろう?)という点がポイントです。(坂本さんは狙ってどちらとも取れそうな発言をするからなぁ

彼らの活動がファンを呼びファンがコミュニティを育て、コミュニティの愛がこれだけのお金を呼び込んだのです。人が集まればお金が集まり、お金が集まれば人も集まる。この理想的な循環がここまで大きな出来事を生んだのだと思います。

 

ただ世の常ですが、当たればデカイということが知れ渡ってしまった今「純粋な面白さだけで認められる社会ではない」という点は認めざるを得ないと思います。

悲しいかな、金のためなら何でもやる人間は腐るほど存在するのがこの世の中です。たとえ純粋な気持ちで始めたものでも、どうせ金目当てなんでしょう?という色眼鏡からは逃げられない。アンチのコメントがこれだけたくさん付くことがそれを証明しています。

 

単純にゲームを愛する者としては、ゲーム実況にはゲームの新たな魅力を発見する楽しさがあります。彼らがゲームの面白さを広めてくれることは大歓迎です。

しかし同時に人間が集団になった時、金が絡んだ時の醜さ、めんどくささ、そんなモノと無縁では居られれない悲しさを感じざるを得ません。金は本当に人間の本性を暴きますね。

 

まとめ

  • ゲーム実況は二次創作(的創造物)であり同時にタレント業である。
  • ゲーム実況には実際のゲームプレイとは違った面白さ=付加価値が存在する。
  • 付加価値を生んでいるのは実況者のパーソナリティ、タレント力である。
  • マネタイズが進んだことで実況者のタレント性や集客力が強化された。
  • ゲーム好きにとっては面白さを広げてくれるのは大歓迎
  • しかし、タレントを取り巻く醜い諍いは勘弁願いたい

 

長くなってしまったので今回はこのへんで。

今後この業界がどうなっていくのか?

本当に広告ベースのマネタイズは機能しているのか?

ゲーム制作者側はどう考えているのか?

…などなど、話のネタには事欠かないので引き続き気が向いたら書き連ねて見ようかなと思います。

ご一読いただきありがとうございました。